アンナプルナ農場の気まま日記

信州伊那谷で有機農業に取り組んで20年。農場の「いま」をお届けします。

「エニグマ変奏曲を聴く」 その17 ショルティ指揮ロンドンフィル

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  録音は1974年。
 英国出身ではない、「外様」のサーがロンドンフィルを振った録音をもうひとつ。
 
 僕が最初にこの曲に出会ったのがこの演奏でした。小学生のころ、プレーヤーは兄のお下がりをもらったけどレコードなんて数枚しかなく、音楽はもっぱらFMラジオに頼っていた時代のお話。ラジカセなんていうものはなく、番組表をチェックしては聴きたいものがあればラジオにテープレコーダー(RECの赤いボタンとPLAYボタンを同時に押すやつね)を密着させてふとんでぐるぐる巻きにして防音して録音する、という必死のパッチ(古っ)でエアチェックをしていたもんです。カセットテープなら小遣いで買えたからね。で、60分テープの片面にちょうど入ったこの曲を毎日のように聴いていました。特にティンパニが活躍するTroyteが―当時は変奏名なんて知らなかったけど- 気に入って、なんども繰り返し聴きました。
 
 そのうちに思いはエスカレートして、夢はオーケストラのティンパニ奏者に。オケの後ろでこれを自信たっぷりにたたくオノレを心熱くイメージし、当時新聞広告によく出ていた某コーヒー会社の「オーケストラの楽器プレゼント」というのに親には内緒で何度もはがきを書いたもんです。なんでも指揮者の故石丸寛氏が全国のアマチュアオケを育てるキャンペーンの一環だったと思います。ティンパニは当選者が毎回一人だったかな。もうひとつ好きだったビオラ、というのにも出したが当然駄目でした。

 でも中学時代は時代の先端をゆくシンセサイザーオーケストラの部活に入り、この二つの楽器にバーチャルながら触れる機会を与えてもらいました。高校へ進むと本物のオケがあって、ティンパニではなくビオラと運命の出逢いをすることになり、今に至るというわけです。
 
 それにしても今思えば、戸建てとはいえ郊外の新興団地の狭い実家にティンパニ(2台1組?)が送られてきたらご近所様の手前、どうするつもりだったのだろう。そうなったら人生が変わっていたかもしれません。
   
 あら、またまた余談が過ぎましたね。演奏はショルティらしい直截で推進力にあふれる表現で、やっぱりかっこいい、の一言でしょうか。固いばちで叩く乾いた音のティンパニやフルートのひなびた音色も印象的。ただ、第4曲変奏の終わり、いったん落としてからクレッシェンドするのはちょっぴり品がない。ま、余談を書くために紹介するようなもんでしたね。