アンナプルナ農場の気まま日記

信州伊那谷で有機農業に取り組んで20年。農場の「いま」をお届けします。

エニグマ変奏曲を聴く その10 ハンス・ロスバウド指揮ケルン放送交響楽団

事情によりジャケ写真はなし。

ドイツの放送オケをもうひとつ。1956年のモノラル録音。ロスバウドはクライネルトより少し先輩だけど、西側で活躍し、ドナウエッシンゲンの現代音楽祭に代表される現代音楽の紹介に力を入れた人だからずっとメジャー。録音も意外に多い。
 やはり硬質な響きで、やはり現代音楽の指揮者か、と構えていたらクライネルト盤よりずっとロマンティックな演奏。冒頭から第1変奏はアゴーギクに変化を持たせ、たっぷり歌う往年の巨匠スタイルを見せる。その後しばらく淡々と進んだかと思うと第8変奏「W.N」ではAllegrettoの指定を無視し快速に飛ばす。せかせかとニムロッドに突入し、ここでぐっとテンポを落とす趣向かと思いきや、それほどでもなくいっぱい食わされる。
 続く第10曲「Dorabella」、知り合いの娘さんのこもったような口調を表す木管のリズム、楽譜指定のテヌートは無視。これは違うだろ?チャーミングなはずが木訥とした田舎娘になってしまった。いっぽうで第13曲「Romanza」は凝った演奏。ティンパニのドラムロールを大きめに取り、波の音を表しているようなビオラのフレーズが浮き沈みを鮮やかに描く。クラリネットソロも限りなく不安で、美しい。

 終曲もやりたい放題。Stringendoの箇所、piu mosso(急に早く)で演奏されるケースが多いが、いっさい無視!のインテンポ。普通聞こえないホルンのパッセージを強調するなど、全体に不思議ちゃんの印象が強いまま、曲が閉じられる。

 ひとこと。狐につままれたような演奏です。