アンナプルナ農場の気まま日記

信州伊那谷で有機農業に取り組んで20年。農場の「いま」をお届けします。

エニグマ変奏曲を聴く~③ビーチャム指揮ロイヤルフィル

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 1954年、ロンドンでのライブ。音質はよくないが、一言で言ってウイットに富んだ、とてもチャーミングな演奏。エルガーの良き理解者だったビーチャムらしい、自家薬籠中の演奏といっていいだろう。
 
 スタイルは自作自演に近い。テーマは同様にゆっくりと歌われるが、作曲家のように時代がかったポルタメントを多用するということはなく、現代的だ。

 以降、各変奏曲は性格付けが見事に行われる。たとえば4曲目のW.M.B。短気な性格の主人公らしく、咳き込むように怒鳴り散らしたかと思うとあわただしくドアをバタンと閉めて出て行く様子がユーモラスだし、かっこよく演奏されることの多い7曲目troyteも無器用なピアノの様子が容赦なく描かれる。また一転ニムロッドではうなり声をあげてオケを奮い立たせ、高らかに盛り上げる。ここで登場するエルガーの友人のなかにはビーチャムも知り合いだった人も多いはず。親しみを込めた手紙を思わせてくれる。

終曲。楽譜通りに演奏されることがー自作自演も含めて(笑)ー少ないが、練習番号69のStringendoがきっちり行われているのに好感が持てた。ライブらしい、勢いのある締めくくり。拍手は思ったほどではない。

1961年まで生きたビーチャムは後年ステレオ録音を数多く遺している。この曲ももう一度ちゃんとした形で残してくれていたら、というのは無い物ねだりだろうか。