アンナプルナ農場の気まま日記

信州伊那谷で有機農業に取り組んで20年。農場の「いま」をお届けします。

エニグマ変奏曲を聴く ~②作曲家自作自演

この曲の聴き比べをするうえで絶対に欠かせないのがこれ、作曲家自身による自作自演だ。ネット https://www.youtube.com/watch?v=kaPtKoL-FsM で聴いたので音質はーそもそも1927年録音とあるから推して知るべしだが-さておき、作曲家のスコアに込められなかった思いをこうして音として聴けるのは幸いなことだ。オケはロイヤル・アルバート・ホールとあるが、一時期首席指揮者を務めるなど関係が深かったロンドン響だろうか。

冒頭のテーマは思い入れたっぷりに提示される。ポルタメントの多用はかのメンゲルベルグを思い出させるほど甘くせつない。トロイテは快速。スコアにないティンパニのアクセントや、アッチェレランドがみられ、興に乗った演奏になっている。ニムロッドも伸び縮みする自由なテンポ。ここでもポルタメントが多用され、夢のような世界が描かれる。第11変奏のg.r.sは史上最速とも思える猛烈な演奏。犬が急流に飛び込む様子が楽しく描かれる。ここ、この演奏で一番好きかも。そして終曲。スコアにはアゴーギクが細かく指定されているが、ここではインテンポで突き進む。ディナーミクも単調で、ppのティンパニを強打させるなど、「?」がいくつもつくような演奏。

全曲を通して聴いて、なんだか違和感が否めない。前半の豊かな感興が、終曲が近づくにつれだんだん冷めてくるからだ。緊張感がとぎれた、と言ってもいいかもしれない。

と、ここまで書いてyoutubeのコメント欄に目が止まった。技術的な問題から、当時は時間制限がある中での収録ではなかったか、というもの。とすれば、録音助手などからの「あと3分」といった指示がある中での録音だったかもしれず、以上ぐだぐだ述べた問題もそうした制限に帰するのかもしれない。

ま、なにはともあれ聴いてみてください。貴重な録音であることは間違いないので。