アンナプルナ農場の気まま日記

信州伊那谷で有機農業に取り組んで20年。農場の「いま」をお届けします。

「エニグマ変奏曲を聴く」 その15 コンスタンティン・シルヴェストリ指揮ボーンマス交響楽団

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 取り上げようか迷った一枚。でもクラオタとしてはこの人の演奏があるのなら矜恃をかけて(?)選ばざるを得ないかな、と思ったもので・・・。

 知る人ぞ知るルーマニアの個性的な名指揮者。「新世界」や「チャイ5」「ローマの松」などツボにはまったときの雄弁な語り口は麻薬のような魅力がある。ルーマニア出身といえばかのチェリビダッケと一歳違いだが、脂ののりきった50代なかばで急逝したのが惜しまれる。この録音は1967年のボーンマスでのライブで、残念ながらモノラル。音の解像度もあんまりよろしくない。
 
 テーマと第一変奏はアゴーギクを大きく変化させ、ポルタメントも使って思い入れたっぷりに歌われる。この独特の節回しは各変奏でも聴かれ、さらにフレーズや変奏の終わりはたいていリタルダンドやためを利かせるなどアクの強い演奏になっている。
 第一変奏で、弦の刻みによるテーマは一音ずつアクセントをつけていくのがおもしろい。第二変奏ではフルートが速いパッセージで落ちたり、「Troyte」や第8変奏ではテンポの変化についていけずアンサンブルに乱れが生じるなど「事故」が散見される。ニムロッドは曲に入る前の曲のブリッジ部を長いフェルマータにして、期待感を抱かせるが、意外に粘らない演奏。最後の盛り上がる箇所のトランペットのfpが付いたクレッシェンドは少々お下品でいただけない。
 いっぽうフィナーレは速いテンポで健康的に進むが、肝心なところのシンバルとバスドラが聞こえない。第一変奏同様に弦のトレモロによる主題に一音ずつアクセントをつける手法が、全体の統一感を感じさせてくれる。ただ、練習番号79のプレストのあともテンポを落とさず突入し、結末はあっけない。拍手はなし。

 というわけで、肩すかしの多い演奏で、これは出来不出来の激しいシルベストリの録音としては記録にとどめておきたい程度の一枚、と言わざるを得ない。手兵のボーンマス響もあまりにも雑。やっぱり紹介しなければよかったかな。 ただ、カップリングの「ドンナ・ディアナ序曲」と「ポーランド交響曲はともに名演なので損はないですよ。