「エニグマ変奏曲を聴く」 その12 ストコフスキー指揮 チェコフィル
1972年のライブ録音。変わった組み合わせですが、商業録音のようです。拍手はなし。レコードの帯を見ると1977年に亡くなった彼の追悼盤なんですね。時代を感じます。
「外連味」という言葉も知らなかった小学生のころ、ラジオで聴いたショルティか誰かの演奏でこの曲を知り、もっとねちっこい演奏をーと楽しみに小遣いをためて購入したのに、それほど変わった演奏でもなくがっかりした記憶があります。併録の「法悦の詩」にえらい興奮した覚えはあるけど。今思えばヘンな小学生でしたね~。今でも全然かわらず変ですが(ほっとけ)。その後、本シリーズで最初に紹介したモントゥー盤に出会ってからはそっちばかり聴いていました。
で、あらためて聴いてみました。やっぱり粘っこい部分は多いとはいえ、前回のマゼールに比べればおとなしいものでした。
変わったところといえば、第5変奏「R.P.A」の最後をフェルマータで伸ばし、アタッカで続く第6変奏「Ysobel」は一転速いテンポで進めるのが印象的。「Troyte」は鮮烈な演奏で、最後、トロンボーンに楽譜にないクレッシェンドを付け加えて効果を増している。第12変奏「B.G.N」はアゴーギクに変化をたっぷりつけてよく歌う。この変奏では随一の名演ではないだろうか。
そして終曲。アレグロというよりプレストで勢いよく始まり、静かな部分はテンポを落としよく歌う。コーダ部分までの盛り上がりは次第にテンポを落としていくので最後はどんな大見得を切るのかなと思いきや、あれっと思うほどあっけなく終わる。
米国で長く活躍したストコフスキーだが、生まれ故郷の作曲家へのオマージュなのか、個性をぎりぎり抑えて曲の良さを伝えていると思います。チェコフィルはライブということもあってちょっと難あり。あんまりこんな曲は弾いたことなかったんだろうなあ。