アンナプルナ農場の気まま日記

信州伊那谷で有機農業に取り組んで20年。農場の「いま」をお届けします。

さようなら、小春

火葬を終えて気持ちに区切りがついたのでご報告させてください。少々長くなると思いますがご海容のほど。

 

我が家の末娘、小春(黒柴)が先週の土曜日に永眠しました。ちょうど9歳半の誕生日の朝でした。 朝食を終え、私が「畑に行ってくるね」と背中をなでて出かけたあと、妻と子ども3人に見守られる中、ちょうどきれいなまんまるお月様が西の山に沈んでしばらくしたころ、静かに息を引き取りました。私も畑仕事が手につかず1時間ほどで帰宅したときにはもうどんどん冷たくなっていくところでした。ぽたぽた落ちる涙をふきもせず、ただただ背中をなでてお別れをしました。短すぎる、でも全力で駆け抜けた9年6か月でした。

 

今年2月、普通に元気だった小春の背中にしこりができたので獣医さんに見て貰ったところ、腫瘍の可能性があるから手術して検査してみましょう、ということに。判明した結果は「リンパ腫」。血の気が引きました。犬には良性のものはなく、腫瘍を摘出してもリンパ液は全身を回っているためどこで芽を出すか分からないため抗がん剤の治療が一般的と薦められました。リンパ腫には2種類あり、小春の場合はより悪性の高いT細胞性とのことで、治療しない場合は一ヶ月ほどで死に至る場合もあるとも。家族会議の結果、体への負担の割に治る見込みが少ない抗がん剤治療は受けず、より体の負担の少ないステロイド剤など対処療法でターミナルケアを受けることにしました。

 

徐々に食欲がなくなってきたときには家族それぞれが刺身やチュール、鶏むね肉、ご飯など考えつくすべての餌を並べてみたり、薬の効果で一時期はもとのカリカリご飯を食べられるまでに回復したり、と一進一退を繰り返しました。大好きだった散歩も徐々に距離が短くなって帰りは抱っこ、という日々が続いたあと、亡くなる前日の昼過ぎにけいれんを起こし「キャン!」とひと鳴きして倒れ込んでからは完全な寝たきりに。なにも口にしなくなったためスポイドで口を湿らせていましたがだんだん苦しそうになり、夜は一晩中添い寝してなで続けました。

 

犬を飼いたかったのはまずは私。子どもの頃から近所の犬と仲良しで、ずっと自分でも飼いたい思いを抱き続けていました。そしてなによりも私以上に生き物好きだった長女。誕プレ、七夕、初詣・・・考えつくすべての「お願い」に「犬」と言い続け、彼女が小4くらいの時から方々のペットショップ回り(遠くは塩尻まで!)を始めました。

 

2013年3月、おなじ地区内にあるブリーダーさんから黒柴の赤ちゃんが生まれそう!と聞いて見学に。まだ一歳と少しというお母さん「小梅ちゃん」はそれからすぐに元気な6匹の赤ちゃんを産み(初産でした)、我が家は女の子が欲しかったので2匹の雌のうち前足が太くて元気そうな子を選びました。お母さんにちなんで「小春」と命名。季語の小春は秋だけどま、いっか、ということで(笑)。

 

そうして9年前の春、小春が我が家にやってきました。当時は長女が小学6年生、長男は入学したばかりの1年生。それからすぐに家族の中心になりました。犬を飼うのは初めてで知らないことばかり。曰く、残飯は塩分が多いから専用の餌を与えるべし、曰く、外で飼うとしつからないので夜だけでも家に入れるべし、云々。しばらくは夜だけ玄関で過ごしていましたが、長女が大学進学で家を出てさみしがるようになったこともあって気がつけば室内犬になってました。
 

散歩では近所の老犬「ゴンちゃん」が大好きで、そばを通るといつもちょっかいを出してました。ゴンちゃんも面倒くさそうに相手をしてくれてましたが数年後に亡くなって寂しい思いをしたものです。畑の土手やなんかでは穴を掘ってモグラやネズミを追い回すのが大好きで、何度か捕まえたことも。室内犬になってからはペチカの回りで鬼ごっこをしたり、息子とのかくれんぼ真剣勝負も楽しんでいました。思い出は書き始めるとキリがないのでこの辺で。

 

2月に癌が発覚し、余命におびえながら暮らしていた日々。かわいがっていた長女が不在の時に死なせるわけにはいかない、と祈るような気持ちでした。それが半年以上も命を燃やし続け、亡くなったのは長女が自動車学校通いのため帰省している間で、しかもたまたま授業がない土曜の朝。息子も学校が休みで、妻ともどもしっかり見届けることができました。前夜も思い残すことないくらい夜通し我々夫婦になでさせてくれるなど「あっぱれ」(by妻)な最期でした。

 

さんざん吠えついたガス屋さんや宅配便、郵便局のお兄さんたち、あらためてごめんなさい。来るたびに吠えつかれてもめげずにかわいがってくれた近所や友人の皆さん、そして親身に相談にのって適切な薬の処方をしてくれたN動物病院の先生、本当にありがとうございました。短いけれど充実した9年半、家族はじめみんなを幸せにしてくれました。本人(犬)も幸せだったんじゃないかなと思います。

 

小春は多くのこと、とりわけ他人の気持ちを察することの大切さを私たち家族に学ばせてくれました。多感な時代をともに過ごした我が家の子どもたちもおかげで反抗期もなくーあってもいいんですがー、思いやりある優しい青年に育ってくれました。感謝してもしきれません。

 

長くなりました。最期まで読んでいただきありがとうございました。あらためて、小春、家族になってくれてありがとう!最期までよく頑張ったね!大好きだよ!

 

(写真は昨年春、お花見の際の雄姿)