アンナプルナ農場の気まま日記

信州伊那谷で有機農業に取り組んで20年。農場の「いま」をお届けします。

エニグマ変奏曲を聴く~⑤シノポリ指揮フィルハーモニア管

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 回を追うごとにフェイスブックの「いいね」が減る究極のオタクシリーズ。これまでの4枚から一気に新しくなり、世は平成、1989年の録音。大して期待しないで聴き始めたら一気に引き込まれました。こ、これは、名演だ!・・・。

一言でいえば、ドラマチックな演奏、ということになるだろうか。メリハリがあって、めちゃめちゃかっこいいのだ。特に大好きな「troyte」のティンパニは心すくような打ち込みだ。フィルハーモニア管のティンパニ、こんなにうまかったっけ?もしかしてシュターツカペレ・ドレスデンのゾンダーマンを連れてきた?

 秀逸な録音も特筆すべきこと。オケを対向配置にしているのでバイオリンの掛け合いがはっきり聞き取れる。第二変奏「H.D.S-P.」ではピアノの指練習を表しているといわれる難しいパッセージが左右で飛び交うのが楽しい。実は定演でこの曲を初めて取り上げる伊那フィルも対向配置に挑戦。慣れない第一バイオリンの隣に座って落ち着かないびよりすとの農場主、でも休みの多いこの変奏では1stと2ndの奮闘ぶりを楽しく見守ることができて幸せなんです。あんなシャープやらナチュラルだらけで激しい移弦を伴うパッセージ、びよらには絶対無理。下に降りてこなくて本当に良かった。エルガー大先生もそこは分かってらっしゃるようで、優しく書かれたパート譜に感謝です♡

 きれいな録音のせいか、第13変奏ロマンツァ(航海を表現)で船のスクリュー音を表しているらしいドラムロール(ティンパニをスネアドラムのスティックで叩く指示)が、そうではなくどうもヘリコプターかオスプレイのプロペラ音に聞こえてしまうのは私だけでしょうか。

 話題がちょっとずれました。とにかく立派な演奏。イギリス音楽というよりも、大叙事詩あるいは傑作の屏風絵のような一大スペクタクルを味わえる、といえば良いのだろうか、ううむ、やっぱりうまく言えない。ま、初めてこの曲を聴く若い人にはお薦めだと思いますよ。

 併録のチェロ協奏曲も絶品。デュプレ・バルビローリ盤以外は聴いた気がしなかったが、ここでのマイスキーは完璧なテクニックで入魂の演奏を聴かせる。オケとの丁々発止もスタジオ録音と思えないほど熱い。このカップリングでは理想的な一枚ではないだろうか。

それにしてもこれだけの演奏を聴かせてくれたシノポリ、54歳の若さで急逝してしまったのが悔やまれます。ぜひ手兵のシュターツカペレ(ティンパニはもちろんゾンダーマン!)でエニグマを聴きたかった!