作業小屋にはいつもねずみ取りを仕掛けてある。
以前近くの農協支所の売店が閉店するときに捨て値でもらってきたそれ。ラップの箱を少し大きくしたくらいの、細長い筒である。
これが、よく働いてくれる。
エサもないのに、ネズミの通路とおぼしきところに掛けておくと面白いようにとれる。
こないだもふと気がつくとばたばた音がするので「お、最近よくみる大物か?」と何気なくわなごと水に漬けた。
ずいぶん暴れる。いつもより重い。静かになるまで時間がかかったが、二匹はいったのかな、などと重いながら息絶えるのを待った。
蓋をあける。傾ける。
どさっ、という音とともに細長い物体が滑り落ちた。
ん?
ネズミではなかった。
細長い、茶色いきれいな毛皮。長い尻尾。
イタチだ。死んじゃった。この手で、殺しちゃった。
・・・。
ネズミを捕ってくれていたんやねえ、これまで。
なんでこないな細長い狭いところに入ったんや。体ぎちぎちやん。
とぼやきつつ、中を確認してから水に漬けるんやった、と猛省した。
ネズミもイタチも、そしてこの私も同じ命を授かった身、と分かってはいる。命に軽重はないのかもしれないけど、ネズミを片付けた時より何倍も、ぐったりと疲れた。この手で殺めた命の重みが、ぐっとのしかかってくる。
ごめんな。いつもネズミを捕っていてくれたんやな。ありがとうな。
つぶやきながら穴に埋めてやった。
あああ、心が痛い。